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READYFORが目指す「乳化」 への取り組み

READYFORが目指す「乳化」 への取り組み

こんにちは、READYFORでVP of Engineeringをしております、いとひろ( id:itohiro73 )です。

本記事はREADYFOR Advent Calendar 2020の記念すべき第一日目です。今年はREADYFORがアドベントカレンダーに初参戦!メンバー一同完走目指して頑張ってまいりますのでどうぞよろしくお願いします。

さて、READYFORでは「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というビジョンのもと「想いの乗ったお金の流れを増やす」というミッションに取り組んでいます。そのために大切にしている価値観が「乳化」という概念です。本記事ではこの乳化という概念と、その状態を目指すためのいくつかの取り組みについて説明します。本記事は今年の夏に開かれた デブサミ2020夏 の講演内容に加筆修正したものになります。

READYFOR Tech Vision

READYFORでは、 「組織の中にエンジニアリングが自然に溶け込んでいる状態」 を「乳化」と呼んでおり、全社的にこの「乳化」の状態を目指しています。

乳化

ビジネスとエンジニアリングという2つの概念を対立概念として考えるのではないく、必要に応じて混ざり合い、組織全体として最大限のイノベーションとパフォーマンスを発揮したい、そんな思いをこの「乳化」という言葉に込めています。

この「乳化」というワード、実は広木大地さんのnote記事『「2つのDX」というコンセプト』で言及のあった「エマルション現象」を参考にしており、昨年の10月頃プロダクト開発ミーティング中にCTO町野が発した、READYFORはこのエマルション・乳化というイメージに向かっていきたいという話から端を発しております。

今ではプロダクト開発チーム内はもちろん、全社的に「乳化」というワードが日常的に会話の端々に出てくるようになってきています。しかしながら、「乳化したい」、と字面で言うのは簡単ですが、実際にその状態になれるかどうかはまた別の話です。本記事ではREADYFORが乳化を目指すために実際に行ってきたさまざまな取り組みを紹介していきたいと思います。

「乳化」という概念を全社的に共有する

まずやったことは、READYFORは「乳化」していくんだという想いを全社的に共有することでした。まだコロナに入る前にオフィスで全社的に行っていた朝会において、持ち回りで司会と3分スピーチをする場があったのですが、そこで「乳化」についての想いを語りました。

また、その数週間後にあった全社ミーティングでは2020年のエンジニアリングの戦略を共有するとともに、この「乳化」という概念を繰り返し強調しました。

全社MTG時のSlackの様子
全社MTG時のSlackの様子

エンジニア外の社内メンバーに対しても「乳化」という概念を波及させること、そしてその状態が良いなと思ってもらえることがとても大事だと思っています。

ビジネスプロセスを理解するために可視化する

READYFORは、「想いの乗ったお金の流れを増やす」ためのしくみとして、実はかなり複雑なドメインを扱っています。

READYFORのクラウドファンディングサイトを覗いてみると、一見普通のWebサービスのように見えます。どこにドメインの複雑さが隠れているのでしょうか。 READYFORのクラウドファンディング

実は、クラウドファンディングの実行者さんがREADYFORに申し込みを提出してからプロジェクト公開をするまでや、支援者さんからの支援が実行者さんにわたるまで、READYFORの社内ではさまざまなビジネスプロセスが走っています。

READYFORのビジネスプロセス

こういった複雑なビジネスワークフローをエンジニアがしっかり理解して改善や新規開発に取り組んでいくことも「乳化」をする上ではとても大切になってきます。では、どのように理解していけば良いでしょうか。

実際、ビジネスワークフローというものは、それを実際に行っている現場のメンバーが一番理解しているものです。それを現場のメンバーが自ら可視化できるのが一番理想的です。そのために、READYFORではBPMNというモデリング記法を活用していこうと考えました。

BPMN

BPMNを活用するためには啓蒙していく必要があります。studyチャンネルを作って地道に啓蒙活動していきました。

BPMNの啓蒙 #1
BPMNの啓蒙 #1

一度使ってみればその便利さが身に染みるので、地道に啓蒙です。

BPMNの啓蒙 #2
BPMNの啓蒙 #2

地道に啓蒙活動を続けていると、自ら試行錯誤してくれるメンバーが徐々に現れます。

BPMN試行錯誤
BPMN試行錯誤

そして、気がつけば様々なメンバーたちがBPMNでワークフローを可視化し始めてくれました。

BPMN ワークフロー可視化
BPMN ワークフロー可視化

啓蒙活動をしたとはいえ、正直READYFORメンバーの「まずやってみる」力、そして「乳化」への柔軟性には非常に驚いてます。

これでBPMNを活用して様々なビジネスワークフローを理解し、改善していくための素地が出来上がりました。

BPMNによるワークフローの可視化
BPMNによるワークフローの可視化

同じミッションを共有し、ともにつくる

エンジニアリングが組織に溶け込んでいくためにもう一つ重要なこととして、「同じミッションを共有し、ともにつくる」ということです。

READYFORではこのためにOKRという目標設定のフレームワークと、Squad体制という組織体系を活用しています。

OKRやスクワッド体制に関しての詳細は割愛しますが、Wantedlyの森脇さんのブログが参考になるので興味のある方はぜひ参照してみてください。Squad体制は、端的にいうと、ひとつのミッションの達成を目指す職能横断チームを組成することです。

READYFORのSquad体制の中でも、「乳化」の特徴をよく表しているSquadとして「決済・会計基盤Squad」を紹介します。

「決済・会計基盤Squad」では、「健全かつ堅牢なお金の流れを実現し、かつ把握できるSystem of Recordをつくる」というミッションを持ち、CFOの元田をはじめとする経理メンバーとエンジニアメンバーで組成されているSquadです。

決済・会計基盤Squad
決済・会計基盤Squad

System of Record
System of Record

「想いの乗ったお金の流れを増やす」というミッションを持ったREADYFORにとっては、決済・会計基盤Squadが取り組むシステム開発は事業の根幹を担うとても大切な領域となります。

事業部が実現したいこと、それを経理チームが実務として行う入金処理・出金処理・仕訳処理を要求分析・要件定義をすることを通して、どういったシステム構成であれば今後の事業展開に対してスケーラブルな仕組みになるのか、膝付き合わせながらまさに「乳化」して議論し、お金の流れを実現していく部分の自動化・システム化に取り組んでいます。

実際に現場の業務を行っている経理メンバーと、それを自動化・システム化していくエンジニアメンバーが、お互いの専門性を尊重し合いながらものをつくっていくプロセスは、まさに「乳化」の良い面が現れているなと思います。

日常をハックする取り組みを背中で見せる

日常の何気ない自動化は、「乳化」の醍醐味でもあります。最近は日常的に使うツール自体が拡張性を持っていたり、アドインを足すことでワークフローを自動化できたりと、非常に自動化がやりやすくなっていることが多いです。非エンジニアにとっては、ぱっと見た感じ敷居が高くみえるようなことでも、実はすごく簡単に実現できたりする。そういったことも、実際にやっているところを見ると人間やってみたくなるものです。

そんな中でも実際にやって見せて組織に広がっていった事例をいくつかご紹介します。

まずは、Slackで特定の絵文字スタンプを押すだけで別のチャンネルに投稿を飛ばすことができる、Reacji Channelerの導入。

Reacji Channelerの説明
Reacji Channelerの説明

こちら実はコマンドですごく簡単に設定できるのですが、まずは導入して使ってみることで、気になる人が現れます。

気になる人が現れたらその場でReacji Channelerコマンドの利用方法をSlackで共有し、さらにその共有した内容をReacji Channelerでproductivityチャンネルに送ると言う自給自足。

Reacji Channeler啓蒙活動
Reacji Channeler啓蒙活動

他にも「乳化研修」と称するトレーニングの場を設け、その場でZapierによる自動化をデモして見せ、実際に自分でも同じZapierを作ってみるということをやってみました。業務で使いそうな、「Gmailで受け取ったメールをSlackのチャンネルに送る」みたいな内容がさっと実現できるのを見て、その場で実際に試してもらう。さらに、内容が非常に簡単なので、このトレーニングを受けた人は口コミ方式で他の人に乳化研修を実施してもらう、という形で「ツールを使うと何が実現できるのか」の理解を広めてもらうこともできました。

Zapierを使ってその場で自動化をデモしてみる乳化研修
Zapierを使ってその場で自動化をデモしてみる乳化研修

広がる乳化の輪
広がる乳化の輪

ビジネスサイドの「わからない」に寄り添う

今年はコロナ禍による、資金需要の増加、寄付需要の増加があり、実はこれまでにないレベルで支援額・支援数が増えた年でもありました。

そんな中、これまでにREADYFORが経験してこなかったレベルでの同時支援数増加や、メディアで取り上げられたりSNSでの拡散等による同時アクセス数の増加による負荷が生じ、技術的な問題によるさまざまな処理限界が少しずつ明らかになり、クラウドファンディングの現場で実際にユーザーと対峙している現場メンバーには「何ができて何ができないのかわからない」不安感が生じ始めていました。

ただでさえイレギュラーな対応に追われていたコロナ禍において、限られたリソースでそれらの技術課題をすべてタイムリーに解決するのは非常に難しく、エンジニアチームでの調査の元、その時点で把握できている問題のカテゴリー分けととそこで生じうるリスクについて整理して全社的に共有しました。

支援数増加による処理限界の共有
支援数増加による処理限界の共有

すると、社内の仲間たちからものすごい勢いで感謝の言葉をいただけました。

負荷増加時の情報共有に対する社内の反応
負荷増加時の情報共有に対する社内の反応

これはエンジニア的にはなかなか驚きのリアクションです。なぜなら、この時点ではまだ技術的な問題が解決できたわけではないのですから。ではなぜここまでの感謝を得ることができたのでしょうか?

「わからない」ことが「わかる」状態になる。「不確実」なものを「確実」なものにする。それも一つの問題解決といえます。どこにリスクが存在していて何が起きうるのかが把握できる、それだけで実はいろんな問題に(解決ではないにしろ)対処できる可能性は増えると言えます。

エンジニアは問題が起きるとついつい技術的な解決法にすぐ目が向かってしまいがちですが、実はそれだけが問題解決の唯一の道筋というわけではないということは事あるごとに思い出したいです。

ピープルウェアという30年以上前に出版された本で「ソフトウェア開発上の問題の多くは技術的というよりも社会学的なものである」と書かれており、実際そうだなと思う場面はそこかしこに存在しています。

ピープルウェア引用
ピープルウェア引用

READYFORでは「乳化」を通してこういった社会学的な問題に対してもアプローチしていけるような組織であり続けたいと思います。

終わりに

まとめ
まとめ

いかがだったでしょうか。READYFORが「乳化」という状態を目指すために取り組んできているいくつかの事例に関してご紹介しました。冒頭にも書きましたが今回の記事は デブサミ2020夏  の講演内容に加筆修正したものになります。こちらから元セッションのスライドも見れますので合わせてご覧ください。

実は、本アドベントカレンダーでは、エンジニアやプロダクト開発メンバーのみならず、コーポレートチームやビジネスサイドのメンバーも参加しています。まさに「乳化」を体現するようなアドベントカレンダーになっていけると良いなと考えています。

明日はREADYFORに乳化を促す業務ハックエンジニア、s_runoa が持続可能な効率化について書いてくれるようです。お楽しみに!