READYFOR Tech Blog

READYFOR のエンジニアブログ

サービス立ち上げのプロダクトマネジメントをPMM・TPMで分担した話

READYFORでPdMをしている@laura_koです。 こちらは「READYFORアドベントカレンダー2021」8日目の記事です。

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タイトルの通りですが、先日サービス開始した「READYFOR 継続寄付」の立ち上げにあたって、プロダクトマネジメントを2人で分担して行なった際の事例をご紹介できればと思います。

READYFORのPdMは、より企画に強い・より技術に強いなどバックグラウンドが様々です。その中で、担当するプロジェクトのアサインや、分担をどうしていくか試行錯誤している最中です。

いわゆるPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)・TPM(テクニカルプロダクトマネージャー)という形でプロダクトマネジメントを複数人で分担する体制を取る会社も増えてきていますが、実際にどのようにしているのかオープンになっている事例が少ないと感じたため、1例として書き残してみようと思います。

ちなみに前提として、READYFORでは複数のPdMが関わる場合はプロジェクトによって分担を決めて取り組んでおり、ここに記載している分担で全てのプロジェクトを進行しているわけではありません。 今回は分担がうまくワークしたと感じていますが、やはりプロジェクトの規模や関係者の構成など、状況によって様々だなと思うところもあります。

「READYFOR 継続寄付」とは

まずはサービスについて簡単にご紹介します。

READYFORはこれまでクラウドファンディング事業を中心に成長してきました。クラウドファンディングは目的や目標を掲げ、たくさんの方から単発の支援をいただく資金調達形式です。

一方、今回サービス開始した「READYFOR 継続寄付」では、毎月の定期的な支援をいただく資金調達をサポートしています。 支援を募集する団体は安定的な活動資金を継続的に得られ、支援者はより長く活動の状況を知ったり応援したりすることができます。

readyfor.jp

クラウドファンディングと全く別の事業やプロダクトというよりも、クラウドファンディングという既存のプロダクトやユーザー体験をより拡張するような形になるため、

  • 事業自体はプロジェクトメンバーが中心となりつつも、社内に関係者が広くいる
  • 既存プロダクトに広く改修を行なう

というプロジェクトとなりました。

どのように役割分担したか

今回、プロダクトマネージャーとしては参加したのはPMMとして私、TPMとしてkecy (@kecbigmt)の2人です。 プロダクトマネジメントに関連した部分は、PMM・TPMの2名のPdM、リサーチ段階から一緒に進めユーザーさんへの営業〜カスタマーサクセスを中心に事業全般を担当する事業担当者1名、の3人での連携が中心となりました。

合わせて、プロダクト開発に関わるエンジニア・デザイナーはもちろんのこと、 社内には主に下記のような関係者がいました。

  • マーケティング
  • カスタマーサクセス
  • プロジェクト審査チーム
  • 法務
  • カスタマーサポート

プロダクト開発の流れと分担

【PMM】

  • 市場理解(ターゲット設定や競合情報など)、ユーザーインサイト理解のためのリサーチ
  • リーンキャンバスの作成
  • 要件の概要企画
  • プロジェクト体制の組成
  • LPなどユーザー獲得に関わる部分のディレクション

【TPM】

  • プロダクト要件の整理
  • ユーザーストーリーマッピング
  • 仕様やUIの検討
  • 開発のプロジェクトマネジメント
  • QA

【PMM&TPM】

下記のような判断はどちらかがメインというよりも2人でディスカッションしながら行なっていました。

  • 優先順位付け
  • スコープ判断

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リーンキャンバスからプロダクトの詳細に落とし込んでいくところが今回のPMM→TPMへメイン担当をバトンタッチする境界になりました。

リサーチや企画が進んでいたところでTPMがプロジェクトに加わり、それまでのリサーチ結果やどのようなプロダクトにしていくのがいいと考えているか・背景を全て伝えた上で、TPMがプロダクト要件やユーザーストーリーをアウトプットとして打ち返してくれ、それをベースにディスカッションすることで認識を揃えていく、というような動き方を取りました。

この進め方については2人のスキルセットや特性によっても最適な分担が変わってくるところではないでしょうか。

PMMがプロダクト要件の整理までアウトプットした方が効率的になる場合も多々あるかと思いますが、特にまだ「仮説」が多いサービス立ち上げのタイミングだったことから、初期の段階でコミュニケーションコストが大きくなった部分はありましたが結果的にその後の認識齟齬が生まれにくかったと感じています。

2人ともが自分の言葉で語れる状態になることを重視し、分担するのが良さそうに思いました。

コミュニケーションライン

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社内外での関係者とのコミュニケーションはこのような形で行ないました。 基本的にはプロダクト開発に関わるメンバーとの連携はTPM、それ以外の社内のコミュニケーションはPMMに集約、という形です。

【PMM】

社内の各チームとのコミュニケーションや、「プロダクトには関連するが開発とは別で進められる」ようなタスクを集約(オペレーション構築、プロジェクトの審査フローの整備、LPの作成、など)

  • 事業担当者
  • マーケティング
  • カスタマーサクセス
  • プロジェクト審査チーム
  • 法務
  • カスタマーサポート

【TPM】

開発関連のチーム外の連携を集約

  • 他の開発プロジェクトチーム
  • QAにご協力いただいている会社さん

ミーティングなど

  • デイリーミーティング

PMM-事業担当者、PMM-TPM、でそれぞれデイリーMTGを30分ずつ実施していました。 短くてもリアルタイムに情報共有ができたため重要なミーティングだったと感じます。 また、PMMの私が他チームとのコミュニケーションやタスクを多く持っていたこともあり、事業担当者とのMTG・TPMとのMTGはそれぞれ別々に実施しながら、ハブとなり事業担当者-PMM-TPMの3人の間での情報共有を担保する形としていました。

  • 週次で全体ミーティング

事業担当者、PMM、TPMを中心に、プロジェクトメンバーが集まるMTGは週1回実施。 全体としてのプロジェクトマネジメント機能や、デイリーミーティングで出たトピックのうち重要なものを話し合う、サービス企画機能を持っている場として運用しています。

  • 開発チームのスプリントレビューにみんなで参加

開発チームはスクラムを1週間のスプリントで行なっています。その中でもスプリントレビューはTPMが担当しつつも、エンジニアやデザイナーだけでなくPMMや事業担当者も一緒に参加し、不明点を確認したり、徐々に出来上がっていくプロダクトを見て盛り上がったりしていました。(ここが楽しい時間ですよね)

良かったこと

  • お互いの牽制関係や説明責任が生まれたことで、誰のためにどのようなプロダクトを作ろうとしているのか、常に問い続けられた

これには大きく2つの側面があります。

まずは事業担当者-PMM-TPMの3者でトライアングルができたこと。例えば「この優先度はこうしたい」「これもスコープに含めたい」などの議論が発生した場合に、健全な形で牽制関係や説明責任が働き、どうするのが本当にベストなのか問い続けられたと感じています。

今回はリサーチ〜企画をした後、プロダクト開発と使っていただけるユーザーさんへの営業活動が並行して走っているような時期があったため、ユーザーさんからの声をリアルタイムに把握しながら進められたという背景もあります。 特に優先順位やスコープの判断は、営業活動と開発プロジェクトマネジメントどちらにも影響が大きいため、スケジュールなどの制約がある中で「なぜこのような判断をしたのか」それぞれがしっかりと認識をすり合わせながら進めることが重要です。そのためにはいい意味でのプレッシャーがある構造・かつPdMが2名いる3者のトライアングルだったことが寄与していたと感じます。

次にPMM-TPMでの連携です。 今回は、優先度やスコープ・仕様やUIなどのユーザー体験に関わることは2人で一緒に判断を担うことが多かったです。単純に2人いることで、視点の抜け漏れがないか確認したり、フィードバックを経て判断をブラッシュアップすることができたと感じます。 ただし、これに関してはケースにより、1人に明確に決定権がある方がスムーズな場合もあるだろうと思います。

  • 関係者とのコミュニケーションラインを分担したことで、PdMがボトルネックになることを避けられた

事業担当者-PMM-TPMでのコミュニケーションはかなり密に取りつつ、その他のコミュニケーションラインやタスクを明確に分担しながら進めました。「プロダクトには関連するが開発とは別で進められる」タスクはPMMが担当し、TPMはプロダクト開発に集中することで、PdMの業務が溢れずに進行することができました。 PdMの業務上、その時々で頭のリソースを使うことや気になるポイントが違ってくるので、2人で分担しそれぞれ任せ合うことができることはやはり大きなメリットでした。

今回の場合、プロジェクトの規模や、関係者の数・それぞれの関係者と一緒に行うタスクの量などにより、2人で分担するメリットが2人の間でのコミュニケーションコストなどのデメリットを上回りましたが、これにも一定の条件があると感じています。 冒頭に書いた通り、READYFORでは現状はプロダクトマネジメントを複数人で担当する場合には都度役割分担を決めて取り組んでおり、ベストプラクティスを探っている段階ではあります。


プロダクトマネジメントを複数人で分担する事例としてご紹介しましたが、サービスは始まったばかり・役割分担についてもまだまだブラッシュアップしていきたいところ、ということで、またこのTech Blogなどで状況をアップデートできればと思います。

また、このアドベントカレンダーではTPMのkecy (@kecbigmt)もこのプロダクト開発についての記事を書いてくれる予定なので、ぜひ合わせてご覧ください。

READYFORのプロダクトマネジメントに興味がある方・プロダクトマネジメントの分担について同じく試行錯誤中の方などは、ぜひお話できると嬉しいです。プロダクトマネージャー(PMM)の募集や、Twitterなどでお気軽にお声がけください!

最後まで読んでいただきありがとうございます。 アドベントカレンダー、明日は同じくPdMの@makkinry222さんです! qiita.com