こんにちは、READYFORでVP of Engineeringをしております、いとひろ( itohiro73 )です。 本記事はREADYFOR Advent Calendar 2021の最終日、25日目の記事となります。
実は、2020年にも同様のタイトルの記事を書いておりました。
その際に、2021年の取り組み展望を以下のように掲げていました
- より多くの想いの乗ったお金の流れを増やすための、価値ある新規プロダクト開発
- データドリブンな意思決定と仮説検証を回せる体制づくり
- ユーザー数や支援総額の拡大にスケーラブルに拡張していける基盤づくり
- 安心・安全を高める品質向上・セキュリティ施策
- 中長期的なビジネス価値の創造につながるリファクタリング・技術的負債の解消
- 急成長したエンジニアリング組織を支える強くしなやかな体制づくり
こちらをベースに2021年実際どうだったか振り返っていきたいと思います。
より多くの想いの乗ったお金の流れを増やすための、価値ある新規プロダクト開発
今年は去年までの採用活動の成果によりプロダクト開発の組織体制が整ってきたこともあり、以下のような多くのプロダクトの価値創出にフォーカスできることができました。
これらの価値創出を裏側で支える技術として、アウトカムを意識したロジックツリーの構築、ユーザーに届ける価値をしっかりと考えていくためのユーザーストーリーマップの考え方の活用、新規プロダクト開発におけるPMM(Product Marketing Manager)とTPM(Technical Product Manager)の分業の模索、開発チームのアジャイルな改善を回すための振り返りの仕組みの模索等、様々な取り組みでプロダクト開発のアウトカムを意識しながらの動きをしてこれた1年かなと思います。
データドリブンな意思決定と仮説検証を回せる体制づくり
上記のようなプロダクトの価値創出を推し進めていく上で、データドリブンな意思決定は非常に重要です。
READYFORでは2019年にCTOの町野 @amachino がジョイン以降、意思決定に必要なデータ分析基盤の整備・指標設計・各種クエリ・ダッシュボードの整備を怒涛の勢いで進めてくれたおかげで、ビジネスサイドからエンジニアリングサイドまでredashでのデータ分析を積極的に行う文化が醸成されてきています。
2021年はプロダクトの機能開発文脈においても本格的に指標をベースに施策の仮設構築・効果検証を行うマインドと体制が整ってきた1年であったと体感しています。各スクワッド内での施策議論や、月次で行われているスクワッドリード報告会においてもアウトカムベースでの指標を意識した議論が行われており、仮説検証を回せる健全な体制が整ってきたと言えるかなと思います。
また、エンジニアリング文脈においても指標ベースで施策検討・改善を回していくための体制が整いつつあります。
詳しくはこちらの記事後半の「データ駆動型のエンジニアリング」をご覧いただけると幸いです。
ユーザー数や支援総額の拡大にスケーラブルに拡張していける基盤づくり
2020年のコロナ禍突入以降、クラウドファンディングを活用した資金需要が大幅に増加してきており、READYFORではユーザー数、プロジェクト数、支援数いずれも大幅に増えてきています。
今後クラウドファンディングにとどまらない新しいお金の流れを作っていくためにも、ユーザー数・トランザクション数増加に伴うスケーラビリティの担保は非常に重要な課題となってきています。これらに対応するために、2021年2月には支援導線のサービス疎結合化、また8月には全ての本番サービスインスタンスのEC2 => ECS移行を完了し、よりスケーラブルなアーキテクチャーへの変遷を遂げることができました。
また、各種通知やダッシュボードを拡充することで何らかのパフォーマンス問題に関しては即座に対応できる基盤と体制づくりが進んだ年になりました。
2021年は「基盤づくり」が主眼でしたが、2022年に向けては、よりSLO/SLIを意識した本格的なSRE活動への注力していこうと準備を進めています。
安心・安全を高める品質向上・セキュリティ施策
READYFORは想いの乗ったお金の流れを作っていく上で、安心・安全を担保できる品質やセキュリティの施策は非常に重要な領域となっており、2021年は以下のような活動を推し進めてきました。
- ISMSに準じたリスクアセスメントの実施と継続的な改善
- 支援導線の負荷試験実施・パフォーマンスボトルネックの解消
- インフラ領域での認証情報関連のセキュリティ強化
- 不正検知の仕組みの導入のためのデータ蓄積フェーズ開発
また、エンジニアが自発的にセキュリティを学んでいる様子はこちらの記事をご参照ください。
中長期的なビジネス価値の創造につながるリファクタリング・技術的負債の解消
READYFORでは2021年に「ドメインモデリングSqd」というスクワッドを立ち上げ、ミッションとして「READYFORのコアドメインの変更容易性を高める」というミッションを掲げ、以下のような活動を推し進めてきました。
- 変更容易性を高めるべき対象を理解するためのコアドメインの把握、コンテキストマップ、ドメインモデルの構築
- コアドメイン周辺領域のリファクタリング対象領域の分析・概念モデルの再設計
- CodeClimateを活用した技術的負債の可視化・対応必要箇所のissue化・フォローアップ
- DDD勉強会・変更容易性設計勉強会の開催を通じたエンジニア基礎設計能力の向上
こういった活動を後押しする上でもREADYFORが大切にしている「乳化」という概念が重要になってきます。
READYFORは約10年間積み重ねてきた凝集度の低い構造がそこかしこに存在しており、また、ここに本格的に対峙するためにはエンジニア組織全体の深いドメイン理解・設計力向上も必要となるため、今期は土台作りという位置付けで現状理解とエンジニアチーム全体の基礎設計力向上を重点的に推し進めてきました。ここはまだまだやれることが山積みなので、2022年に本格的なリファクタリング・技術的負債の解消へと大きく一歩進められると良い領域かと思います。
また、上記のようなドメインに深く根ざしたマクロ視点でのリファクタリングは中長期を見据えての活動ですが、よりミクロな特定領域でのリファクタリングや技術的負債の解消は日々の開発プロセスの中でゴリゴリと推し進めてきています。
急成長したエンジニアリング組織を支える強くしなやかな体制づくり
2021年には、エンジニアリング本部に「組織企画室」が立ち上がりました。
この組織では、VPoEである私とDevHRマネージャーの西和田 @ayuminishiwada を中心に、エンジニアリング本部に所属するエンジニアリングマネージャー陣とともに、採用施策/人事・組織文化づくり/採用広報を力強く推し進めています。
- エンジニア採用戦略の策定・採用プロセスの運用
- 全社人事施策のエンジニアリング本部単位での運用
- 新入社員のオンボーディング設計・運用
- Tech Branding(技術広報)
詳細はこちらの記事をご参照ください。いわゆる事業部人事(HRBP)がエンジニアリング本部直下に所属している組織体制はなかなか珍しいのではないかなと思うので、ぜひ事例としてご参考にしていただけると幸いです。
また、READYFORのプロダクト開発に関わる組織はクラウドファンディング事業本部内のプロダクト企画部、エンジニアリング本部のプロダクト開発部・システム基盤部という部門構造に分かれており、スクワッド体制を通じての乳化が非常に重要な一方、各組織のミッション・フォーカス領域をより明確化してきました。
その中でもエンジニアリング本部に内包される組織においてはこちらのような軸で構成されています(実際のミッション・OKRに関しては企業戦略にまつわる部分もあるため少しぼかして表記しています)
プロダクト開発部の部長兼エンジニアリングマネージャー大羽田 @feat2kj 主導での、プロダクト開発にまつわる組織的な取り組みはこちらをご参照ください。
システム基盤部の部長兼エンジニアリングマネージャー熊谷 @KUMAN_R 主導での、基盤領域にまつわる組織的な取り組みはこちらをご参照ください。
その他の取り組み
さて、上記に挙げた取り組み以外にも、2021年はさまざまな取り組みがあったのでハイライトさせてください。
- Makeを活用したDockerローカル開発環境構築の自動化
- OSSポリシーの策定と運用開始(記事化予定)・OSS活動の推進
- PR作成時に動作確認用ECSテスト環境を自動的に構築する仕組みづくり(超便利!!)
- Progressive Deliveryの実現可能性を探る技術調査
- フロントエンドのIntegration Test改善
- デザインシステムのカイゼン取り組み
他にも記事化はされていない大小様々な取り組みがありました!(書ききれない...!!!)
終わりに
2021年を振り返ると、本当にプロダクト的にもエンジニアリング的にも組織的にも大きく成長することができた年だったなと感じます。
2022年は、2年前に掲げた「思いをつなぐ金融機関」への進化に向けて、中期的なプロダクトロードマップの解像度を上げたうえで、そこに向かうためのプロダクト開発・エンジニアリングの基盤整備に一丸となってより注力していける1年にしていければと考えています。
2022年もREADYFORのエンジニアリングを力強く推し進めていければと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。