こんにちは、私はREADYFORでプロダクトマネージャー(PdM)をしている槙(まき)です!
READYFORでは2022年6月1日にLINEログイン機能をリリースしました。
そこで今回は、PdM目線でLINEログイン機能リリースを振り返り、以下の4点を振り返りたいと思います!
- 実装に踏み切った理由
- 仕様のポイント
- 起きた問題
- 効果
想定している読者層は以下の通りです。
- READYFORのPdMに興味がある方
- READYFORの機能カイゼンに興味がある方
- ご自身のサービスでのLINEログイン導入を検討されている方
なぜLINEログイン機能を実装したか
「課題はログインにあり!」
READYFORでは、プロジェクトを立ち上げてくださる実行者さんのリピートを増やすという目標があります。
では実行者さんは何があるとREADYFORでリピートしてくださるかというと、「READYFORに掲載すれば、資金が集まる」というクラウドファンディングの本質的な意義を達成することで、リピートしてくださるとチームでは考えています。
資金を集める主なサポートは、弊社が誇る優秀なキュレーター陣が担うことになるのですが、プロダクト側としても何か協力できないか、という発想が原点です。
その目標の中で着目したのが、実行者さんからよく聞かれる「新規登録や支援の方法がわからなくて、支援できない支援者さんが多い」という課題です。
READYFORにはご高齢のユーザーも多く、Webサイトへの新規登録に慣れていない方が一定数いらっしゃいます。
そこで、ログイン手段を簡潔にするということを具体的な課題と見定めました。
LINEがログインの課題を解決してくれる
それに対し、今回のリリース以前、READYFORには以下の2つのログイン・新規登録手段がありました。
①メールアドレス・パスワードの組み合わせ ②Facebookアカウントによるソーシャルログイン
①の場合、メールアドレス認証のため、支援導線の中でメールボックスを開いて認証URLを開く必要があるという大きなドロップポイントがあります。
また、②の場合、ブラウザに普段からFacebookでログインされている方は少なく、READYFORログインのために、まずFacebookにログインする必要があり、結局Facebookのメールアドレスとパスワードを打つ必要があるという課題があります。
そこで候補に挙がったのがLINEです。 市場調査したところ、世の中でもっとも利用されているソーシャルログインはLINEというデータがありました。
social plus - ソーシャルログイン利用状況調査2021
LINEログインの強みは、SNSとしての利用者数が日本一であることに加えて、 LINEアプリが端末に入っていれば自動的にLINEアプリが立ち上がりログインに使えるため、ユーザーとしてはメールアドレスやパスワードを打ち込む必要がない点にあります。※
※LINEアプリが自動で立ち上がるのは一部環境に限られます。
これらの事実から、どの程度、新規登録や支援数に好影響があるかを予測し、LINEログイン導入を決定しました。
仕様のポイントとなった部分
LINE導入とFacebookリファクタリングを同時に実施
Facebook連携は独自実装だったため、メンテナンスにコストがかかっている問題がありました。
さらにLINEログインも追加で独自実装となると、メンテンスコストはさらに増えることが懸念されます。
そこで、今回は認証機能を標準化するリファクタリングも同時に実施しました。
このリファクタリングにより、LINEログインを追加してもメンテナンスコストをかけることがなく、より高機能なセキュリティも期待できます。
認証標準化ライブラリとしては、OmniAuthを使用しました。
工数の大部分はこのOmniAuth導入にかかったと言っても過言ではない重要な部分でした。
自動友だち追加とLINE認証プロバイダー
LINEによるログインのUIUX改善とともに、実は今回もう1つ目標がありました。
それは、READYFORのLINE公式アカウントの友だち追加を増やし、そこからの支援を増やすことです。
READYFORには以前からLINE公式アカウントがあるのですが、登録者数は決して多くありません。
支援者さん向けCRM※としてのLINE公式アカウントを育てることはマーケティング課題の1つでした。
※READYFORの支援者さんとのコミュニケーションが可能な顧客基盤(Customer Relationship Management)。メールマガジンや各種SNSなど
そこで手っ取り早い方法がREADYFORにLINE新規登録する際、ついでにLINE公式アカウントの友だち追加をしてもらうというものです。
下画像のように、「友だち追加」がデフォルトでONになるようにしました。
ネットで検索しても確実なことは記載されていなかったのですが、調査した結果、LINE認証プロバイダーにならないと、LINE連携時にLINE公式アカウントの自動友だち追加をできないことがわかり、LINE認証プロバイダー登録することにしました。
これもネットには書いていないのですが、LINE認証プロバイダーは、大規模アカウントを除くと、1企業が普通になれるものではありません。
LINE認証プロバイダー契約をしているツールベンダーに協力してもらうことでLINE認証プロバイダーになることができます。
弊社ではこの辺りの調査をマーケティング部と協力しつつ進めました。
手間も費用もかかる調整でしたが、後に、これをやっておいたことが大きな効果を産むこととなります。
スムーズなUIUXとなるよう設計
新規登録はユーザーにとってとても面倒なもの。
その負担を少しでも軽減すべく、今回のLINEログイン導入では以下のような工夫を凝らしました。
①「ログイン」画面からLINEで「新規登録」できる
READYFORではログイン画面と新規登録画面が別となっています。
<ログイン画面>
<新規登録画面>
ここで、ログイン画面の「LINEでログイン」を選択しても、アカウント未登録だった場合、そのまま新規登録に進めるようにしました。
下図の赤いボックスの部分が対象です。
その際、「いつの間にか新規登録してしまった」と勘違いされることのないよう「下記の内容でユーザー登録します」とアラートを表示しています。
たとえて言うなら、役所の窓口で、来訪者が本来の窓口と別の場所での申請を希望してきても、文句を言わずに対応してあげるような優しさです。
②メールアドレス認証前の仮登録アカウントでもLINEで上書き登録できる
READYFORは10年以上の歴史を持つサービスで、「以前あるプロジェクトで支援しかけて、そのときは結局支援しなかったけど、また別のプロジェクトで支援したくなった」ということがありえるサービスです。
その際、以前メールアドレスとパスワードの組み合わせで新規登録しようとして、メールアドレス認証だけせずに終わっていた場合、 その認証メールを探して認証リンクをクリックするか、改めて新規登録画面でユーザー名などを打ち直して再度認証メールを飛ばさない限り、新規登録が完了しないという落とし穴にユーザーがはまってしまう懸念があります。
そこで、今回工夫をして、仮登録状態で認証前のアカウントと同じメールアドレスでLINE新規登録しようとした場合、 仮登録だったアカウントの情報を上書きして、まっさらな状態から新規登録できるようにしました。
下図の赤いボックスの部分が対象です。
たとえて言うのであれば、以前友だちに話したことを、友だちが忘れてしまっていても、嫌な顔をせずにもう一度同じことを話してあげるようないいヤツです。
(補足) アカウント認証が完了している場合の「登録済みの方法でのログインを促す」は、ユーザーに手間を踏ませずにそのままログインできる仕様を検討したのですが、 なりすましのリスクを考慮し、そのままのログインは不可としました。
READYFORでは支援者さんのクレジットカード情報や銀行口座情報などセンシティブな情報に触れることがあるため、ここは慎重な判断をしています。
※今後変更の可能性はあります
③LINEからメールアドレス取得できなかった時だけ、メール認証を挟む
前述した通り、メールアドレス認証が挟まることはUXを損ねるポイントです。
そこで、LINEからメールアドレスを取得できた場合はメール認証をスキップする仕様にしました。
下図の赤いボックスの部分が対象です。
そもそもLINEは電話番号があれば登録できるサービスのため、メールアドレスを持っていないアカウントも想定されますが、 その場合はREADYFORの画面上でメールアドレスを入力、メールアドレス認証を必須とする仕様にしています。
リリースまでに起きた問題、不具合
LINEログインは多くのtoCサービスで当たり前のように導入されている機能の1つです。
そのため、工数が少なく、問題も特に起きず導入できるだろうと考えていたのですが、実際には大小様々な問題が発生しました。
結果的には、キックオフからリリースまでに5ヶ月程度かかっています。
今回はその中でも、他社や他プロジェクトでも参考になりそうな問題を2つ取り上げたいと思います。
OmniAuth(認証ライブラリ)の利用で不測の不具合やエラーに遭遇した
認証標準化ライブラリとしてOmniAuthを導入した前述しましたが、それに伴って、いくつもの問題に見舞われました。
特に大きかったのは2つです。
①iOS14.x以下、Mac11.x以下の端末でログイン・新規登録が一切できない不具合が発生
iOS14.x以下、Mac11.x以下と記載しましたが、正確に書くと「Safari Version14.x以下のApple端末」で発生した問題です。
※SafariだけでなくChromeやFirefoxでも発生
原因は、上記端末の場合にCSRFというセキュリティ検証が失敗することでした。
CSRFトークンを正しく送信するよう修正し解決したのですが、以下のような要因から原因特定を早急に行うことができず、かなり解決に時間がかかってしまいました。
- 同時期にFacebookログインできない障害が他社サービスで発生していた
- エラーログがSentry(ログ監視ツール)に飛ばない状態になっていたことに気づけなかった
- ユーザーが故意に外部アカウント連携をキャンセルした挙動と同じエラーログメッセージだった
②原因不明のエラーログが発生
上記①の問題を解決し、再度OmniAuthをリリースした際に、今度は原因不明のエラーログが発生しました。
ERROR -- omniauth: (facebook) Authentication failure! csrf_detected: OmniAuth::Strategies::OpenIDConnect::CallbackError, csrf_detected | Invalid 'state' parameter
手元の端末でログを再現することができなかったのですが、①の問題でナーバスになっていたため、切り戻しの判断となりました。
原因は、外部アカウント連携後にブラウザバックする動作(利用に問題はない動作)がそのエラーログを発生させていたのですが、特定が難しく時間がかかってしまいました。
LINEログイン機能はキックオフから5ヶ月程度かかったプロジェクトだったのですが、 このOmniAuth問題がなければ1ヶ月はリリースを早められたと感じます。
①、②の問題はともにバックエンドエンジニアの栗原(ksss)さんが職人芸で特定してくださったのですが、栗原さんがいなかったら今どうなっていたのか…ゾッとします。
Facebookのリファクタリングを一部後回しにしたら思考コストが余計にかかった
今回のLINEのソーシャルログイン導入では、最低限の部分のみFacebookのリファクタリングを行い、残りの部分は後日対応することとしていました。
これは、事業インパクトがあるLINEログインリリースを少しでも早めるためです。
しかし、このことによって「この修正は今回やるのか?次回か?」のような確認の手間がかかったり、Facebookの残り部分を対応するときに改めて思い出す必要があったりと、施策の検討コストやスイッチングコストが余計にかかってしまいました。
※Facebookの改修は現在も進行中です
つまり、後回しにせず同時にFacebookのリファクタリングもすべて実施していたら、全体がかなり早く完了した可能性があるということです。
これは上記のOmniAuthの問題で時間がかかって、プロジェクトメンバーでさえ詳細の仕様を忘れかけてしまったことも遠因にあります。
この問題は、振り返ってみて感じた結果論ではあるのですが、次回類似のプロジェクトをする際には、改めて慎重に判断したいと思います。
上記の通り、たくさん問題は発生したのですが、プロジェクト終了後、プロジェクトメンバーで振り返りの機会を設けて課題を洗い出し、今後の対応を検討できたのはとてもGoodでした!
効果
それでは、結局リリースした効果はどうだったのかを振り返っていきます。
新規登録率の改善
まずは何より新規登録率の改善です。
具体的な数値は控えますが、以下のようにLINE導入後、全体の新規登録率が改善していることがわかります。
※その時々のプロジェクトの性質によって新規登録率は大きく左右されます ※ご高齢のユーザーやパソコンから利用するユーザーも多く、メールアドレス・パスワードでの登録は引き続き1番の新規登録手段となっていますが、LINEが肉薄しています
LINE公式アカウント経由の支援増加
もう1つの大きな効果は、LINE公式アカウントの成長です。
友だち登録数が爆増しているだけでなく、LINE公式アカウントでの投稿のクリック数(折れ線グラフ)、支援総額(棒グラフ)ともに導入以前の5月と比べ、跳ね上がっています。
しかも、このキャプチャを撮ったとき、6月7日だったため、この後まだまだ跳ね上がっています。
弊社の支援者さん向けCRMにはメールマガジンの配信やFacebook、Twitter、Instagramなどもありますが、LINEが大きな柱になりつつあるのは間違いありません。
(詳細はご入社いただけたらお伝えできます!)
まとめ
振り返ってみると山あり谷ありのLINEログイン機能リリースでした。
しかし、実施してよかったのは間違いありません。
今回一区切りとはなりますが、ログイン・新規登録に関するカイゼンだけ考えても、これで終わりではありません。
さらに、支援者さんが支援をしやすいように、裏を返せば、実行者さんのプロジェクトに支援が集まりやすくするようなカイゼンを今後も広く続けていきます。
もしご興味をお持ちの場合、カジュアル面談もできますので、ぜひ弊社採用担当か私槙(まき)にお声掛けいただけますと幸いです!
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